CGMを運営するポイントは?cookpad/食べログ/WEAR/pixivを分析してみた

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CGMとは

Consumer Generated Media の略で、サイトの運営者ではなく、サイトのユーザーがコンテンツをつくっていくメディアサイトです。例えば、口コミサイトや掲示板、コミニティサイトなどがあり、有名な日本のCGMサイトとしてはクックパッドや食べログ、5チャンネル(2チャンネル)やmixiなどがあります。

なぜCGMがいいのか?

ぼくはCGMサービスが好きなのですが、その理由は「自分の好きが他の人の役に立つ世界」だからです。例えば、料理が好きな人(≒得意な人)が自分のレシピを共有することで、他の人がレシピを参考にして、美味しい料理を作ることができる。結果、自分自身、さらには家族や友人らも幸せになることができます。このように「自分の好きが他の人のためになる世界」であるCGMは素晴らしいと思ってます。

また、レシピを共有した人にとっても、参考にした人からの感謝を受けたり、アドバイスをもらったりして、自分の好きをより深めることができる点も素晴らしいことだと思ってます。

だからこそ、ぼくはCGMが好きです。上記であげたCGMサイトもそんな思想でつくられたかもしれませんし、これからCGMを作ろうとしている方もそんな思想かもしれませんね。ということで、本題であるCGMをつくるためのポイントを自分なりに整理してみようと思います。

CGMの成功のポイント

投稿者にフォーカスする

閲覧者と投稿者のどちらに注力すべきか、多くの方は悩まれますが、「投稿者」にフォーカスすべきです。 なぜなら、投稿者にフォーカスすることで、投稿数が増える。投稿数が増えることで、閲覧者が集まる。閲覧者が投稿者になる。このサイクルが回り始めると肥大化していきます。
至極当たり前の話ですが、意外と忘れがちです。

クックパッドではユーザーを「レシピ作成者」「検索ユーザーA(レシピ作成者へアクションする)」「検索ユーザーB(閲覧ユーザー)」という3つに分けており、そのなかでも「レシピ作成者」向けに機能を拡充している。レシピ作成者が投稿しやすいように投稿UXUIの改善や作ったレシピへのアクセスレポートなどなど。

レシピを中心としたエコシステムみたいなものができているかなと思っています。これは何かというと、作者さんがレシピを書くと、それを見た方が「美味しかったよ」という「つくれぽ」を送ってくれて、それが作者さんに届けば作者さんのモチベーションがアップして、更にまたレシピをどんどん出したくなる。

メルカリも出品(投稿者)に絞っていることで、いいサイクルが生まれたという。

出品する。その出品した商品が売れる。売れたお金でまた購入していただく。という流れが、けっこういい感じでできたのかなと、振り返ってみると、思います。

サービスを使う人の多くは閲覧者のため、閲覧者向けのサービスに目が向きがちであるが、メディアを一緒に作っている投稿者にまずはフォーカスするといいのではないでしょうか。
クックパッドやメルカリほどのサイト規模でも「投稿者にフォーカス」していることから、リリース初期だけでなく、CGM自体が投稿者にフォーカスすることでサイクルが回るということだと思われます。

ここで注意が必要なのは、投稿者のモチベーションを金銭にしてはならないということ。投稿のモチベーションがお金の場合は、短期的に人やコンテンツが集まるが、投稿モチベーションが「楽しさ」ではなく、「作業」になってしまう。そうすると、投稿の継続率は低くなり、コンテンツの質が下がりやすくなるかもしれない。

投稿者だけでも満足できる機能をつくる

リリース初期から投稿者にフォーカスするとして、まずは投稿者がサイトに集まる理由を考える必要があると思います。CGMではリリース当初からユーザー間のコミュニケーションを採用しがちですが、最初から投稿者も閲覧者も集まらないので、ユーザー間のコミュニケーションは生まれにくいはずです。そのため、投稿者自身だけでも投稿するモチベーションをまず作る必要があると思います。

私はその投稿モチベーションは「ストレージ機能」だと考えてます。

クックパッドは自分が作ったレシピを保存しておくために、食べログは自分が好きなお店や行きたいお店をメモしておくために、pixivでは自分の書いた絵を保存しておくために。このようにストレージ機能としてCGMサイトを使うことで、投稿者のモチベーションにはなるのではないかと考えています。

そして、このストレージ機能を基に他のユーザーとのコミュニケーションが生まれて、コンテンツの量と質ともに良いサイクルが回っていくのだと考えています。

そのため、人がいなくても、まずは投稿者だけで満足できる機能を作ることがリリース当初で必要なのではないでしょうか。

補足ですが、CGMではユーザー間のコミュニケーションが不要と言っているわけでなく、非常に重要な一つだと考えています。しかし、あくまで初期の段階でコミュニケーション機能は難しいと思ってます。コミュニケーションは掛け算であり、ユーザーやコンテンツが集まっていくとコミュニケーションでドンドン加速していくと思いますが、リリース当初では一人でも満足できる機能が重要だと考えます。

投稿ユーザーにアプローチする

では投稿者が一人で満足できる機能をつくっても、集客しなければ投稿者は集まりません。リリース当初はコンテンツがないので、SEOでの流入も期待できませんし、お金があれば広告出稿も一つの手段ですが、なかなか難しいこともあるでしょう。その場合は、ネットナンパをするといいのではないかと思っています。

例えば、レシピサイトのCGMサイトを作ったならば、ブログで料理屋レシピを載せている人に対して、「こんなサービスをつくったので、使って見てくれませんか?」とお願いしてみることです。ブログだけでなく、TwitterやインスタなどのアカウントにDMしてみるのも一つの手です。その場合は、自分が誰であるか、どんなサイトを目指しているかなども合わせて説明すべきです。もちろん、自分が一番のユーザー(投稿者)となっている必要もあると思います。この姿勢がユーザーになってくれるかどうかに大きく関わってくると思います。

どれだけ濃い投稿ユーザーをリリース当初から集められるかが、CGMサイトでは重要なポイントだと思います。インターネットで発信している方は、すでに情報を発信するハードルを超えているため、他の発信チャネルに乗り換えることはハードルがそこまで高くはないと考えています。ネットナンパを試してみる価値はあるのではないでしょうか。

以上、3つが大切だと思いました。では次に実際のCGMサイトはどうなっているのか見てみようと思います。

CGMサイトを調査してみる

クックパッド

運営者の方が「投稿者向けにフォーカスしている」とお話しされているだけあって、投稿者向けのサービスが多い。アプリのタブバーは「ホーム」以外は投稿者向けの機能ではないかと私は思いました。

クックパッド スクショ 画面遷移

また、投稿画面はUXUIをこだわっているだけあって使いやすく、特に「作り方」のステップは個人的に好きです。(投稿者向け)

クックパッド スクショ 画面遷移

自分の作ったレシピは「Myキッチン」で確認できる(ストレージ機能)。投稿すれば、キッチンレポートで自分のレシピへのアクセス数をみれたり、いいねやコメントを確認できたりする(コミュニケーション機能)。僕のレシピは微妙すぎで、つくれぽは1件もありませんでした。。泣

クックパッド スクショ 画面遷移

レシピを投稿した人と、レシピを基に作った人のコメントも活発でスピーディだと思うので、コミュニティ運営としても、非常に上手く言ってそうな感がする。Twitterのリアルタイム検索でもクックパッドに感謝している人も多い。

クックパッド スクショ twitter

クックパッドの企業理念は「毎日の料理を楽しみにする」。前社長の穐田さんが堀江さんとの対談記事で下記のようなコメントをしていた。

献立って、エンタ―テインメントになりうると思うんです。小学校の頃とか、給食の献立をすごく楽しみにしてましたよね? 「やった! 今日はカレーライスだ」「明日はハンバーグだ!」とかって喜んだでしょ? あれを家庭内でできないだろうかと。

非常にわかりやすい。このように多くの人が体験したことある話として運営メンバーに共有することができれば、コミュニティ運営やサービス運営としての主軸があるため、意思決定しやすいのかもしれませんね。

クックパッドは内紛問題や動画対応遅れなどの問題が起きてしまったけど、今でも個人的には素晴らしいサービスだと思ってます。応援してます。

食べログ

「ホーム」はタイムラインのようになっており、他の人の投稿が見れる。「探す」以外は投稿者向けのコンテンツが多い気がする。(投稿者向け)

食べログ スクショ 画面遷移

食べログというだけあって、自分の行った店(行きたいお店)をログとして記録できる。スマホでは「行ったカレンダー機能」のみだが、PCだと「訪れたエリア」や「マイベストレストラン」などを見れたり、作れたりする(ストレージ機能)。

食べログ スクショ 画面遷移

投稿数が一定になるとコメントやメッセージ機能が開放されて、投稿者同士がコミュニケーションを行うことができる(コミュニケーション機能)。おもしろいところは投稿者同士のコミュニケーションにしているところ。閲覧者を除去することで、コミュニケーションの量は少なくなるけど、コミュニケーションの質を上げているのであろう。ちなみにランキング上位に入る方が、僕みたいな始めた人に対してもフォローしただけで丁寧なメッセージくれて、食べログへの熱量を感じました。
※僕の場合は、20投稿ほどレビュー投稿したら、コミュニケーション機能が開放されました。

食べログ スクショ 画面遷移

食べログは評価の高い投稿者の口コミはランキングにも大きく影響するような設計にしている。これにより閲覧者も便利だし、投稿者のモチベーションにも寄与していると思う。
その他にも投稿者のレビューに対するアクセスランキングを表示したり、オフ会をしていたりするらしい(ネット情報)。なかには本を出したりする人もでている(一騒動ありましたが今回は割愛)。

食べログ スクショ 画面遷移

食べログを作った村上さんは自分の好きな食べ歩きをもっと良くしたいという理由で食べログを始めたという。村上さん自身が食べログのヘビーユーザーみたいです。

私自身も食べ歩きが好きでいろんなサイトを利用しましたが、なかなか身近でいい店が見つからなかったんです。だいたいのサイトは店がお金を出す広告型のサービスで、大規模なチェーン店や有名な店は載っていても、実は身近にありながらも知られていない本当に美味しいお店が出ていません。それに、サイトを見て実際に行ってみると、店側の提供している情報とこちらの期待していたことが違っていたりしてがっかりすることもよくありました。

リリース当初ではかなり泥臭く情報を収集していたみたいですね。企画者の熱量を感じますね。

まずは何もないところから始めたので、グルメ本を買ってきて調べてはデータを手で打ち込んでデータベースを作るところから始めました。最初は、やっと6000店ぐらいからサービスを始めたのですが、店側の情報も会員(店舗会員)になってもらって無料で掲載し、全国に70万店以上ある飲食店をほぼ網羅したいと増やしていった結果、毎年倍増する勢いで伸び、他のグルメサイトと比べても圧倒的に掲載している店の数が多くなりました。

WEAR

WEARは投稿者よりも閲覧者向けにサービスを展開している気がする。タイムラインや探す、ランキングなどが主で、投稿ボタンはマイページ配下にある。これはWEARが単体で収益を狙っているわけではなく、zozotownでの購買意欲を高める目的のアプリだからな気がする。

投稿者はめっちゃオシャレな方々とショップ店員の方が多い。ショップ店員の方は自分のお店での広告としても利用されている。閲覧者向けのため、投稿者はおそらく少なそうだけど、洋服は毎日違うから投稿回数は多いのかな。濃いユーザーがヘビーに使ってる気がした。

wear スクショ 画面遷移

投稿者はあまり多くはなさそうですが、「いいや」ね「お気に入り登録」は結構な人が使ってるので、僕みたいなファッションセンスがない人にもいいねやフォローは来ました笑。人気のある人にはコメントもくるみたい(コミュニケーション機能)。また、zozoで買った洋服や自ら持ち物登録すると、同じ服を持っている人のコーディネートとか見れて参考になる。

wear スクショ 画面遷移

pixiv

僕は絶望的に絵が下手なので、投稿は恐れ多くてしてませんが、クリエイターさんの絵をクラウド上で保存できるだけでなく、ユーザーからのいいねやコメント機能があり、自分のコンテンツを購入までできる仕組みになっていると思う。

pixiv スクショ 画面遷移

好きな漫画の「こんなの見たい!(コナンと灰原哀の非公式カップリングが見たい的な)」のが見れてめっちゃ面白いです。ブログ書こうとしたけど、pixivみてて1日潰れるくらい面白いですね。濃いユーザーがいそう。

pixiv スクショ 画面遷移

おわりに

僕としてはCGMを作る上で「投稿者フォーカス」「投稿者が満足する機能(≒ストレージ機能)」「投稿者集客(≒ネットナンパ)」が重要なのかなと思いました。

これまでは「How(どうやってやるか)」について考えましたが、「Why(なぜやるか)」も非常に重要だと思います。Whyが決まるとサービスの軸が定まり、継続的に開発・運営するモチベーションがあがるかと思います。また、自分が一番のファンとしてサイトのユーザーとなることも重要だと思います。自分が使いたいたくないサイトは、他の人も使いたくないですよね。

そして、もっともっっっっと大切なことはCGMをつくることを「楽しむ」ことだと思います。そうすれば継続することができます。よくあるのが、どんなサイトを作るか考えつかない、なぜやるかが決まっていないという問題。とりあえず面白そうだから、パッと思いついたからという理由だけで、作って世の中に出してしまいましょ。行動すれば楽しくなります。行動したくなくなれば他のことしましょう。

最後はすべてをひっくり返しちゃいましたが、楽しむことを前提に、サービス設計するときにこの記事を思い出していただけると嬉しいです。

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